野球漫画の金字塔「キャプテン」。その故郷を散策!~その3

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八広の居酒屋に墨谷二中の秘密が……

前々回および前回からの続き。

「八広こそ墨谷のモデル地区です」と断言していた人と会うために、東京都墨田区の八広にある居酒屋に行きました。ちょっと早く来過ぎたのですが、やがて約束した人が仲間を連れて居酒屋にやって来ました。この人はHさんと言い、ヤングパイレーツという少年野球チームのサイトを制作しているそうです。

Hさんは、この居酒屋のご主人がヤングパイレーツの監督だった人だとおっしゃいました。この時は70歳を超え、さすがに監督職は退いて総監督になっていましたが、それでも時々ノックをするなど、まだまだ元気だったようです。

そしてHさんは、ヤングパイレーツこそが「キャプテン」のモデルです、と断言しました。漫画では中学の野球部のはずなのに、モデルは少年野球チーム?いったい、どういうことなのでしょう。

「キャプテン」に登場する墨谷二中、「プレイボール」の墨谷高には監督がいません。キャプテンが中心となってチーム作りをするというのがコンセプトです。でも、ヤングパイレーツには監督がいます。それなのになぜ、モデルとなったのでしょうか。

中学野球の仕組み

「キャプテン」の世界では、中学野球にも高校野球と同じように春の選抜大会と夏の選手権大会がありますが、実際には違います。似ているのは、大きな全国大会が二つあるという点です。

まず一つ目は、日本中学校体育連盟(略称:中体連)が主催する全国中学校軟式野球大会(略称:全中)です。全国大会は夏休みに行われ、形としては「キャプテン」での選手権大会に似ていると言えるでしょう。

もう一つは全日本少年軟式野球大会(略称:全日本)で、やはり全国大会は夏休みに行われます。しかも全国大会は横浜スタジアムで開催され、軟式野球をする野球少年にとっては憧れの的でしょう。

両大会とも中学生が参加する大会ですが、最大の違いは全中は中学校の野球部しか参加できず、全日本は学校に関係なくクラブチームも参加できる、という点です。しかし全日本は、中学校の野球部も参加できます。

ヤングパイレーツはもちろんクラブチームですが、それと同時に吾嬬第二中学校の野球部でもあるのです。つまり、全中の大会に参加する時は吾嬬二中として、全日本の大会の時にはヤングパイレーツとして参加しているのです。当然、チーム名だけでなくユニフォームも変わります。

吾嬬二中として参加する時は、顧問の先生はもちろんいますが、この居酒屋のご主人は監督ではなく外部指導員という形で試合についていきます。もちろん、ヤングパイレーツの試合では、堂々と監督として采配を振るうのです。

吾嬬二中が墨谷二中のモデルというのは、そういう意味だったのです。さすがに、漫画のようにキャプテンだけでチーム運営を行うというわけではなかったようですが……。

八広=墨谷の証拠が続々と……

やがて、客も少なくなってきたので、居酒屋のご主人も話に加わりました。ご主人によると、昔にヤングパイレーツをモデルにした野球漫画を描きたい、という人が取材に訪れたそうです。その人が「キャプテン」「プレイボール」の作者である故・ちばあきお先生だったのかはわかりませんが、おそらく関係者であることは間違いないでしょう。

そして、漫画のコピーをヤングパイレーツ関係者のみなさんに見てもらいました。まずは、現在の八広駅とは全然違っていた墨谷駅の絵です(その1参照)。実は、八広駅は以前、荒川駅と呼ばれていて、その頃の駅と漫画の墨谷駅はそっくりだ、とおっしゃっていました。さらに、電車の絵も当時の京成電鉄で間違いないと太鼓判を押しました。

また、漫画での荒川に架かる鉄橋など、八広で間違いない、とのことでした。現在の下町風景も、江戸っ子気質もここ八広に残っている、と筆者には感じられました。まさしく墨谷そのものです。

ただ、墨谷二中の学校内にあった野球部グラウンドに関しては、土地の狭い八広の学校ではちょっと無理でしょう、とのことでした。吾嬬二中野球部、即ちヤングパイレーツは荒川の河川敷で練習しているそうです。

ヤングパイレーツこと吾嬬二中野球部が練習している、荒川河川敷の野球場
2007_0128京都の晩秋0118

墨谷探索へ行こう!

最後に八広へ行ったのは、もう5年以上も前でしょうか。居酒屋へ行った数年後、三たび上京する機会があって、その時はヤングパイレーツの試合を観る予定でしたが、あいにくの雨で中止。やむなくHさんと、居酒屋のご主人とで近くの中華料理屋に行ってビールを呑みました。

現在、居酒屋のご主人はまだお元気なのか、わかりません。でも、八広は現在も下町情緒を残しているでしょう。

ただ、墨田区は劇的に変化しました。東京スカイツリーが完成し、超人気スポットとなっています。

建設中の東京スカイツリー(2010年12月撮影)
DSCF2179

墨田区は超近代都市になりつつありますが、それでも八広周辺には、昔の下町と同じく墨谷の野球少年が走り回っているはずです。

東京スカイツリーを観光した際には、ついでに野球少年の故郷・墨谷=八広を訪れてみませんか?おそらく、日本の原風景を発見できるでしょう。

(完)

2016年2月10日

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