レトロで趣のある建物が目白押し! 醤油の町・千葉県野田市を歩く
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しゅうゆ醸造家の暮らしが体感できる「上花輪歴史館」
今回も、千葉県野田市の旅を続けます。江戸川の土手を降り、報恩寺の境内を抜けると、道を挟んでキッコーマン野田工場の施設が目に飛び込んできます。辺りは醤油の匂いが立ち込め、まさに醤油の町が実感できました。キッコーマンの野球場の脇を通ってさらに行くと、上花輪歴史館があります。
昭和17年に改築されたという冠木門が歴史心をくすぐります。ここは、キッコーマン創業者一族で、上花輪村の名主もあった高梨氏の江戸時代から昭和初期までの建造物、庭園、保管されてきた生活用具・醸造用具などが見学できる施設。実は前回来たときは、全面改装で休館中だったのです。7年越しの希望がかなうと心が浮き立ちます。
江戸時代中期に作られたという長屋門のシンプルなフォルムが素晴らしい。順路に沿って、日本建築の美しさを実感できる表玄関を眺め、庭園へと足を踏み入れます。庭園内には、稲荷神社や神楽殿などの歴史建築物がありました。これらは移築したのですかね。土蔵など古い建築物が建ち並ぶ風景から、当時の豪商の暮らしが実感できました。
個人的に興味深かったのは、屋敷の中に構掘を開削し、船着場を設けている場所ですね。見事な石垣が残っていて、お城をイメージしてしまいました。
この大八車はいかにも頑丈そうで、江戸時代のトラックの趣が…。
ほかにも、今も使えそうな江戸時代の風呂釜や職人の部屋、400石も入ると言われる籾蔵など興味深い展示物が多数ありましたね。
上花輪歴史館の真向かいにあるれんが蔵は、キッコーマン野田工場のもの。庭園の緑と赤レンガの建物のコラボは、いつまでも記憶に残りそうでした。
しゅうゆのことを楽しく学べる「もの知りしょうゆ館」
そこから野田市駅に向けてひたすら町の中を歩きます。駅のすぐそばにもキッコーマンの工場がありました。
駅前の景色は、町の中に工場があるというより、工場のなかに町があるような感じですな。工場の入り口から中を除くと、おお~、なんと前回、江戸川の土手から消えた御用蔵があるではないですか。
野田市駅の近くにある工場の敷地内に移築したのですか。より多くの人たちが、この美しいお城のような建物を拝めるとは素晴らしい。 工場の門には、「もの知りしょうゆ館入り口」の看板がかけられています。でも、「見学コースは予約制です。お電話で予約ください」の無情なフレーズが…。予約しないと見学できないのは仕方ないですな。
「うぬぬ、でも入りたいっす」と、マッチ売りの少女のような表情で工場の門の前にしばし佇んでいました。すると、可哀そうに思ったのか、親切な守衛さんが、「もしお時間がありましたら、是非、中をご覧になってください」と声をかけて下さったのです。私が、そのご厚意に甘えさせていただいたのは言うまでもありませぬ。
しかも、館内ではプレゼントまでいただいちゃいましたぁぁぁぁぁ~
今話題の「いつでも新鮮国産原料仕込みしぼりたて生しょうゆ」。家に帰って早速使わせていただきました。無料でもらったから言うわけではありませんが、鮮やかな色とすっきりとした味でとてもおいしかったです。
申し遅れましたが、この「もの知りしょうゆ館」は、工場見学しながらしょうゆができる工程がたどれるとともに、しょうゆの歴史も勉強できるのですな。400年の醤油の歴史と現在の製造工程などを映像やパネルを使った解説がわかりやすかったです。私は知らなかったのですが、予約しなくても利用できる館内施設はたくさんあるのですね。
館内の「まめカフェ」では、280円のしょうゆソフトクリームを味わうことができました。
少し塩味が効いていて、しゅうゆのコクも感じられておいしかったです。ほかにも、さまざまなしょうゆの味見コーナーも興味深い体験でしたね。
久しぶりの再会となった御用蔵も、しっかり近くから写真に収めることができました。
近くから見ると、さらにお城感が強まりますな。
テレビ番組やコマーシャルのロケでも知られる野田市市民会館
次に向かったのは、キッコーマンの研究本部の近くにある野田市郷土博物館。郷土博物館ですが、やはり醤油に関する資料がほとんどですな。
大正6年に茂木・高梨など野田と流山の醸造家8家が合同して、野田醤油株式会社、現在のキッコーマン株式会社が誕生したのですか。何でも、キッコーマンの商標は、経営者の一人が信仰する千葉県の香取神社の山号「亀甲山」と「亀は万年」をかけ、「亀甲萬」となったそうな。
博物館が建つこの場所は、キッコーマン創業者一族である茂木佐平治の邸宅の跡だったとか。このお屋敷は、大正13年に築かれたその邸宅で、現在、市民会館として利用されているのですな。
こちらも見学できるそうなので、中に入ると、広々とした屋敷の和室の襖が閉じられ、郷土史の市民講座が開かれているようでした。しばし、足を止めて講座を聞いているとレベルの高さにびっくり。しかも、市民の皆さんが熱心に聞き入っている姿が印象的でした。
こちらの厨房。
なんと、ここはテレビの「天皇の料理番」のロケが行われた場所だそうですね。何でも、那須の御用邸の厨房のシーンで使われたと、親切な解説のおじさんが教えてくれました。また、家電メーカーの広告で、吉永小百合が腰掛けていた日本家屋の縁側もここの施設が使われたらしい。
風情のある建物満載の野田市内を散策
これにて本日のウォーキングコースは終了なのですが、野田市は近代化産業遺産の町としても知られているらしいのですよ。 つまり、市内には明治から大正・昭和初期にかけての古い建物がたくさん残っているのですか。 …ということで、街中をそぞろ歩きです。
まずこの古い建物は、興風会館。
昭和4年の建設当時は、千葉県庁に次ぐ大建築であったといわれ、平成9年に国の登録有形文化財に登録されたのですか。こちらも醤油醸造家の寄付によって誕生したらしい。
こちらは、大正15年に建てられた茂木七左衛門邸およびレンガ塀。
なんとキッコーマン創業の茂木家の本家にあたるのですか。豪壮な平屋建ての近代和風建築だそうです。
この建物は、大正15年に落成した旧野田商誘(のだしょうゆう)銀行。
なんと、しょうゆの語呂にあわせたネーミングなのだとか。ひと頃、「トマト銀行」が話題になりましたが、「しょうゆ銀行」もいいですね。
野田にはキッコーマン以外にもしょうゆのメーカーがあります。その中でも有名なのが、キノエネ醤油。1830年創業の老舗で、野田の醤油工場の多くは共同出資でキッコーマンを設立したそうですが、キノエネ醤油は現在まで独立を通してきたとか。白醤油は全国の生産量の30%以上を占めているらしい。
確かに、この古い板塀を見ていると、頑固な職人魂を感じますね。
2015年10月9日