野球漫画の金字塔「キャプテン」。その故郷を散策!~その1
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イチローが愛した「キャプテン」
連載開始から45年近くも経つにもかかわらず、未だに根強い人気を誇る野球漫画「キャプテン」。アニメ化、実写映画化されて、現在でもCSでアニメが何度も再放送されています。
野球少年にとってのバイブルとされ、あのイチローが最も好きだった漫画が「キャプテン」だそうです。魔球や超人プレーは一切登場せず、無名の野球部で選手たちが野球に打ち込む姿は、スポ根が主流だった当時の漫画界にとって一服の清涼剤となりました。
「墨谷」ってどこにあるの?
「キャプテン」の舞台となる墨谷第二中学校、そして「キャプテン」のスピンオフ作品である「プレイボール」には墨谷高校が登場しますが、「墨谷」とはどこにあるのでしょう。「墨谷」が東京の下町であることは確かですが、東京には「墨谷」なんていう地名も、最寄り駅となっている「墨谷駅」などという駅は存在しません。
筆者は生粋の大阪人ですので東京の地理には疎いのですが、墨谷二中の校歌に「荒川を東に臨み」という歌詞があります。つまり、荒川の西側に「墨谷」はあるのでしょう。
そこで東京地図を開いてみると、荒川の西に墨田区を発見。東京スカイツリーで賑わう、あの墨田区です。地名も酷似しており、東京の下町ということで「墨谷」のモデル地区はここで間違いないでしょう。
しかし、一口に墨田区と言っても、その範囲は広い。墨田区の中でも、どこが「墨谷」なのか、検証してみました。そして「墨谷駅」のモデル駅とは?
「プレイボール」で墨谷高が市川へ練習試合に出掛けるシーンがありますが、乗っている電車の絵を見ると明らかに国鉄(現:JR)ではなく私鉄だとわかります。そこで、墨田区から千葉県市川市へ行く私鉄を調べてみると、京成電鉄であると断定。かなり絞り込めてきました。
荒川の鉄橋を越える京成電鉄。この電車に乗って墨高ナインは市川に行った?
そして、京成電鉄で荒川の西側にある駅を地図で見たら、押上線の「八広(やひろ)駅」という駅がありました。さらに周辺を見ると「吾嬬(あずま)二中」という学校を発見。これこそまさに「墨谷二中」のモデル校に違いありません。
「墨谷」のモデル地区?八広を散策
上京する機会があったので、空き時間を利用して八広を散策することにしました。上野駅から京成本線に乗り、青砥駅で京成押上線に乗り換えて、いざ八広駅へ!
ところが、八広駅で降りてみると、呆然としてしまいました。「プレイボール」で見た墨谷駅とは、全く様相が違っていたのです。
漫画で登場する墨谷駅は、いかにも下町という感じの地上駅で2面2線でしたが、八広駅は都会的な高架駅で2面3線。明らかに構造が違います。
高架駅となっている、現在の八広駅。漫画での地上駅の墨谷駅とは全く違う
それでも気を取り直して、八広駅を降りて近所を散策しました。目指すは墨谷二中のモデル校と思われる、吾嬬二中です。
そして遂に、吾嬬二中を発見しました。ここから「キャプテン」が生まれたに違いありません。筆者の興奮は最高潮に達しました。
しかし、そこで見た光景は信じられないものでした。吾嬬二中の校庭は異様に狭く、しかも土や芝生ではなく「タータン」と呼ばれるゴム仕様の陸上トラックしかなかったのです。とてもこんな場所で野球などできません。
「キャプテン」での墨谷二中は、校舎の裏側に野球部専用のグラウンドがありましたが、吾嬬二中にはそんなものはありませんでした。八広駅の構造といい、吾嬬二中といい、やっぱり八広は墨谷ではなかったのか……。失意のまま帰阪しました。
吾嬬二中の校庭。狭いタータン陸上トラックでは、とても野球はできない
思わぬ投稿により、再び八広へ……!
大阪に戻った僕は、野球サイトの掲示板にこの紀行文を書き込みました。やはり八広は墨谷ではなかった、と。
ところが、思わぬ人から書き込みがありました。その人は、この掲示板には一度も書き込みなどしたことが無かったのです。おそらく「八広」という単語で検索したのでしょう。
その人は、こう訴えました。
「違いますよ!八広こそ『キャプテン』の故郷、墨谷ですよ!」
この書き込みに、筆者は驚きました。やはり八広は墨谷だったのです。
この人とは意気投合し、八広で是非ともお会いしましょう、と約束しました。そして約1年後、再び「キャプテン」「プレイボール」の故郷である墨谷=八広に訪れることとなったのです。
(つづく)
2016年2月8日