【滋賀・近江神宮】天地開闢。鐘鼓を鳴らして時を知らせる「漏刻祭」 前編
天智天皇の宮
どれだけ日本史が嫌いな人でも、「大化の改新」を聞いたことのない人はいないのではないでしょうか？
そして知っての通り「大化の改新」は、645年に中臣鎌足と中大兄皇子が蘇我入鹿を誅した歴史的事件です。その中大兄皇子は後の天智天皇であり、彼は5年半という非常に短い期間ではありますが、琵琶湖畔の大津に都を築きました。
で。その天智天皇を祀っているのが、ここ「近江神宮」です。昭和15年鎮座と、神社としての歴史は古いとは言えませんが、天智天皇の大津宮から考えれば350年の堂々たる歴史を持っています。
そしてこの近江神宮では、天智天皇にちなんだ祭、「漏刻祭」が時の記念日の6月10日に斎行されます。そもそも「時の記念日」自体が、近江朝廷で時報を開始したのを記念して、大正9年に制定されたものだとか。皆さん知っていました？
恥ずかしながらわたくし、時の記念日自体は知っていても、その由来は知りませんでした。
神社全体の広さは約6万坪もあります。社殿は「近江づくり」もしくは「昭和づくり」と呼ばれる方式で建てられ、杉や檜がうっそうと茂るお山を背に、本殿と内外拝殿。その周りを回廊が巡っています。
近江神宮への道
関西に住んで早20年以上。しかし大津に降り立つのは初めてです。そしてこの近江神宮にも。
阪急とJRを乗り継いで約1時間半。大津京駅に降り立ちました。JR大津京駅から近江神宮までは徒歩で20分ほど。天気は快晴。地図よ~し。スポーツドリンクよ～し。さぁ歩きましょう。
駅から住宅街を抜けていく道もありますが、せっかく御宮に参るのです。やはり参道を通らねばと思い、時折車が通る以外ほとんど人通りのないJRの高架下の道を抜け、上り坂をえっちらおっちら登ります。
神宮堂の歩道には、近江八景の色タイルが。「石山の秋月」や「三井の晩鐘」など八つきちんとありましたが……。これ、見る人いるのかなぁ？
なにしろ自他とも認める方向音痴さんでございますから。時折地図と標識を確認し、ぽてぽて歩く前方、京阪線の踏切の向こうに、石の鳥居が見えました！
歌かるたの聖地だった！
あぁ良かった。間に合ったと歩み寄った石の鳥居。その横に、ちと場違いに思える画が見えます。はて？
おう！「ちはやふる」ではありませんか。読んだことはありませんが、映画の宣伝や本屋の店頭で見かけたことはあります。うん？ もしやこの近江神宮が、舞台のひとつなんですかねぇ……？
境内で頂いた「近江神宮のご案内」で知った事ですが、近江神宮の祭神である天智天皇、歌かるたの祖神でもあるそうです。小倉百人一首に歌がのっているのは知っていましたが、巻頭歌だとは知りませんでした。ちょっと恥ずかしい。
で。お正月の風物詩としてニュースで何度も見たことのある「名人位クィーン位決定戦」は、ここでやっていたわけで。そうか～。お見それしました。
神さびた森を抜けて
さて。今回の訪問の目的である「漏刻祭」の刻限が迫っております。少々急ぎましょう。
あぁでもこの木々！ 高層ビルが林立する大阪から1時間ちょっとの場所に、こんなうっそうとした森が広がっているなんて。この参道の横にアスファルトの車道がありますが、木の間影に時折見えるだけで、ほとんど無人。涼やかなご神域を一人占めです。
あぁ。前方に第二の鳥居が見えてきました。一礼してくぐらせて頂きましょう。
おう！なんてご立派な手洗い場。これ自体に歴史がありそう。
その横には、心臓破りの階段が。あぁこれ、きっと。近隣に中学校や高校があれば、運動部のトレーニングロードにぴったり。その上に見えるのが、先ほど入り口で見た「ちはやふる」看板の背景に描かれていた丹塗りの「楼門」ですね。
工事中なのがちと残念ですが、それは次回のお楽しみとしましょう。
祭事の出演者発見！
坂のぼりで弾んだ息を整えながら境内を見回すと、「漏刻祭」の出演者と思しき人々を発見！ あれはたぶん直衣ですね。暑い中お疲れ様です。確かあの方々は時計会社や協会の皆さんのはずですが、いやいや中々お似合いですよ？
さてさて。なにはともあれ、内拝殿と紅い回廊で結ばれたちいさなお宮にお参りして。
内拝殿に入れば、そこには大勢の人が。頃はよし。もうすぐ一年に一度の祭事が始まります。
2016年6月27日
