川越の新名所「旧山崎家別邸」は、知られざる川越の歴史

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小江戸川越は蔵造りの街として知られ、菓子屋横丁や川越いものスイーツも人気です。

その川越にあって老舗菓子屋「亀屋」の成した役割は単に川越いもを知らしめただけには過ぎないのです。その一端を垣間見ることができるのが『旧山崎家旧宅』で、2016年4月より一般公開された文化財の新名所を訪ねてみます。

老舗菓子店「亀屋」

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信州中野出身の初代・山崎嘉七が1783年に川越に創業した菓子屋が『亀屋』で、1847年には京都嵯峨御所から「亀屋河内大掾藤原嘉永」の資格を授かります。蔵造りの街並みの一番街にある『亀屋』本店は、川越大火直後の1893年に建てられた豪壮な蔵造りで、店蔵と袖蔵をもつ著名な建築です。

こうした亀屋にあって”四代目山崎嘉七”を襲名した山崎豊は1867年に川越藩の御用商人となり明治期に《第八十五銀行》と《川越貯蓄銀行》の2つの頭取を兼ねる豪商となり、当時の川越経済界を主導する存在となったのです。

旧山崎家別邸とは

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五代目山崎嘉七の隠居所として1925年大正期に建築されたのが現在の『旧山崎家別邸』で、設計は『保岡勝也』です。当時、五代目嘉七は第八十五銀行の副頭取を務めており、1918年に第八十五銀行の設計を保岡勝也に依頼したことがあり、保岡勝也を見知っていたのです。

保岡勝也とは、東京帝国大学で辰野金吾に師事し建築学を学んだ後、現在の三菱地所で当時の一丁倫敦と呼ばれた丸の内の赤レンガ街の設計総指揮に当たった人でしたが、中小住宅に関心を持ち三菱地所を退社し住宅設計者として活躍していたのです。

このような嘉七と保岡の関係から、旧山崎家別邸の建築の際の設計を任せたのではないかと考えられているのです。

川越の私的迎賓館

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別邸の広さは約2,300m²、延べ床面積は250m²あります。主屋の南側に庭園があり、庭の東側に茶室があります。

主屋は、木造モルタル仕上げの洋風屋根葺きの洋館で、その奥には数寄屋造りの和室等と融合している和洋折衷のデザインです。2階は細い横目地の磨き壁のスッキリしたデザインで、まさに大正モダニズムが感じられます。

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洋館の正面玄関からは入ることができず、屋内には和館の内玄関から入館します。

洋館の内部から見るステンドグラスの輝きは大変素敵な光景です。階段の踊り場に据え付けられたステンドグラスは、小川三知の「泰山木とブルージュ」と云う作品で、カラフルな鳥が特徴です。更に下部のステンドグラスは水辺の植物を表しています。

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応接室も壁紙やカーテンは当時のままのものです。

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和室に移ると数寄屋造りの素敵な客室があります。それほど広くはありませんが、主な柱には磨き丸太が使用され、凝った造りの床の間と床脇が煌びやかでいながら、しっとり落ち着いた雰囲気を醸し出しています。

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この客間には畳敷きの広縁があります。ここから見た庭園が一番良く見えるように設えた意匠で、天井のデザイン等も実に凝ったものです。一番の見所と云えるエリアです。

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更に奥には和室のベランダがあります。まさに和洋折衷の創りで、サンルームと云っても良いかもしれません。ここでの見どころは窓ガラスで、手作りの歪んだガラスである”大正ガラス”がそのまま残されています。

茶室と茶庭

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この設計者である保岡勝也は、「茶室と茶庭」を出版するほど和風庭園に造詣が深いことから、こちらの庭園も設計しています。庭園は枯山水と茶庭からなる庭園で、建築と相まって和風庭園の事例として国登録記念物名勝地となりました。

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和室の廊下から見渡すと、なだらかな高低差のある庭園が広がり、石灯籠や手水鉢、畳石などがアクセントになり、木立の先の茶室が風情を添えているのです。

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こちらの庭園は回遊式や実用の庭園としては造られてはいませんので、あくまで客間からみえる光景を楽しむためだけに作られたものなのです。

このように当時の川越の経済の主導的役割を担っていた山崎家だからこそ「私的な迎賓館」と呼ばれる所以なのです。

これまでは期間限定での公開で、建物の中にも入れませんでしたが、これからは建物の2階を除いてすべて見学できますので、川越の歴史とも云える亀屋の姿が垣間見れる新名所は見逃せません。

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2016年7月12日

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