リレー徘徊47:路上芸術in宝塚〜抽象作品2
観光地・宝塚への玄関口であるJR福知山線宝塚駅、阪急宝塚駅近辺にある野外作品が4つ設置されてます。いずれも有名で高名な作家による抽象作品で、前出のオブジェよりも芸術の「表現性」や「パワー」を感じることができますが、題名以外に作品と「感性」で交われる部分が相変わらず無く、作家の真意は不明。観る側に託されています。
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JR宝塚駅前・多様楽器超融合体
二つの駅の間、タクシー乗り場横にある高さ5mほどある楽器を寄せ集め、ひっつけ、融合させたような作品です。作品名「クレッシェンド」〜この言葉の意味は「音楽の強弱記号のひとつ。楽譜で段々強く演奏・発声せよの意味。作家は、フランス出身のアメリカの彫刻家で画家で現代美術家のアルマン・フェルナンデス(1928年生〜2005年没 )、彼は日用品や廃棄物を大量に集積し作品を創り(この手の作品をアサンブラージュと呼ぶそうだ)、第二次大戦後の大量消費社会の「生産・消費・廃棄のメカニズム」への批判を表現しているそう。
このオブジェは、平成7年に設置されたが、この年は、阪神淡路大震災が発生した時。まるで震災後の街の姿を予言したかの様な作品、偶然とは言え複雑な思いになってしまいます。
阪急宝塚駅前1・溶ける鋼鉄の角材?
この作品は、南出口を出て西へすぐの場所にあります。横たわった巨大な金属角材が真ん中が溶け、左右に引っ張られた様相の作品です。作品名「負(マイナス)の鉄」で制作は平成5年(1993年)。作者は、大阪府出身の彫刻家・村岡三郎氏(1928年生〜2013年没)。彼の作品が特徴としては、鉄、硫黄、塩などの自然物質を使って人間の「生命」や「死」を表現するなんだそうで、作品名「負の鉄」の持つ意図を考えてみる〜冷たい金属である鉄が溶ける=分裂する=細胞って感じなのだろうか?
余談ですが、ネットで見たときは錆が浮いてましたが綺麗に黒い塗装がなされてます。これって作者の意図した事なんかなぁ~と、真新しい黒ペンキ塗装の作品を見ての第一印象。これは、ブロンズ像の再塗装でも感じた事なんですが…。
阪急宝塚駅前2・輝く小さな輪っかですが…
駅前の宝来橋の袂にあるステンレス製の2mを越す輪っかの作品で、同じ作家が、S字カーブを描く優美な宝来橋も設計したそうで、この輪っかと橋が対になった作品なんだそうです。作品名ずばり「枠どられた風景」、制作は上記の作品と同じ平成5年、同じ年に阪急宝塚駅が高架化されたんで、駅前再開発の一端だったんでしょうね。
作家はマルタ・パン氏(1923年生~2008年没)、ハンガリーのブタペスト生まれのフランス女性彫刻家、都市や自然との調和をテーマに彫刻作品を作っているとか。この作品の輪っか部分を介して流れるような優雅なフォルムを持つ宝来橋がある風景を見ると全空間が一体となり調和する世界が現出するって壮大な思想の芸術品らしい。国内では、札幌芸術の森や箱根彫刻の森美術館で作品を見る事ができるそうな。高松宮殿下記念世界文化賞のサイトで他の作品と講演録を読む事ができます。
阪急宝塚3・造形としての川を表現
角材を立ち並ばせての表現で、川をイメージしているのかな?と、直感的にわかる作品。作品名「淼(びょう・びょう)淼」で、これも同じく平成5年の作。作品名の「淼淼(渺渺)」とは「水面が果てしなく広がる様」という意味、武庫川の流れを表しつつ、いく本かの石柱を組み合わせ森と淼を同時に表現してるんでしょうかね。作者の市川悦也氏は奈良で生まれ神戸市在住の彫刻家で宝塚大学造形芸術学部で20年間教員をされていた方だそうです。
消えた作品、いずこへ?
かって阪急宝塚駅前広場にあったモニュメント「明日へのコンセプト(平成15年/2003年作)」は、今村輝久(1918年生~2004年没)作、作家自らアルミニュームの表面を研磨して創り出した作品で、私も見た記憶があるオブジェなんですが、今はその位置に宝塚歌劇の銅像が建っています。作家が亡くなる1年前設置された貴重な作品でしょうか。台座的なモノはあるものの作品自体どこへ行ってしまったのか行方不明ままです。
震災後に創られた作品で、題名が「明日へのコンセプト」、前回の「生」のオブジェ同様に「鎮魂と再生」への作家の想いが入った作品ではなかったのでしょうか。作品の写真が手持ちに無いので画像へのリンクを貼っておきます。次回は、巨石作品群に迫る!!です。
2017年2月17日