冬の水辺散歩・八か村落とし親水緑道から東綾瀬公園を歩く 東京都足立区
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国土交通省大臣表彰を受けた八か村落とし親水緑道
今回も東京都足立区を歩きます。前回行った東和親水公園から再び葛西用水親水水路を歩いていくと、十字路があり、そこに「八か村落とし親水緑道」の案内板がありました。
八か村とはいかにもローカルなネーミング。瀟洒な住宅街のイメージに合わないのではと思いましたが、江戸時代はここに流れる農業用水を利用した農村がいくつもあったらしい。
ちなみに、「八か村(はちかそん)とは、六木(むつき)・佐野新田(さのしんでん)・大谷田(おおやた)・蒲原(かばら)・北三谷(きたさんや)・普賢寺(ふげんじ)・五兵衛新田(ごへいしんでん)、伊藤谷(いとや)の八つの村。
これら八つの村を結ぶ水路は、「八か村落堀」と呼ばれていたのですね。水路は綾瀬川まで伸びていたそうですが、やがて用水の役割が終わり、八か村落堀を緑道として整備したらしい。
それで、八か村落とし親水緑道と呼ばれるようになったのですね。今は当時の面影はないですが、道がくねくね曲がっていることから古い道だということはわかりました。
緑道を歩いていると、道の横に面白い形をしたオブジェがありました。
「木猫」って、何? 木に登る猫か、木彫りの猫かと思いましたが、この形はとても猫には見えませぬ。解説板を読むと、これは、錨(びょう、いかり)のことらしい。昔は、いかりを「木猫」と書いた時代があったのですか。
何でも、猫の爪のように海底を引っ掻いて船を固定することから生まれた言葉なのだとか。確かに、石と木でうまくいかりを作っていますな。
さらに行くと、錨のオブジェ。いかりの歴史をオブジェで表しているらしい。
しばらく歩いていくと、小川がギザギザに流れ、途中に水量豊富な滝や植え込みのあるエリアがありました。なんか、ヨーロッパの街並みのような雰囲気ですな。ヨーロッパに行ったことはありませんけど…。
それにしても、この滝のような仕掛けがずっと続いており、水しぶきの音もインパクトがありました。この緑道は、1992(平成4)年に、国土交通省大臣表彰の「手づくり郷土賞」を受賞したのも納得できました。
この辺りの新田を開拓した人の墓がある円性寺
この滝の仕掛けが並ぶ壁の向こうにあるのが円性寺。
円性寺は、江戸時代初期に、存秀和尚(元和元年1615年寂)が開山したと言われる古刹。墓地の中には、この辺りの新田を開拓した河合平内の墓と伝えられる宝篋印塔がありました。
思ったより小さいですが、保存状態がよく大切に守られてきたのがわかります。
ほかにも、1664年に造立されたという庚申塔は初期のタイプで貴重なものだと解説板に書かれていましたよ。
運動、植物観察など多くの人たちが満足する総合公園・東綾瀬公園
再び親水緑道に戻り、最後の目的地・東綾瀬公園に向けて歩きます。突き当りの東綾瀬小学校を右折、親水緑道を道なりに進むと、東綾瀬公園の入り口へと出ました。そこでは、大きな日時計が迎えてくれます。
東綾瀬公園は、綾瀬駅前から点在する広場を遊歩道でつなぎ、U字型の形になっている特徴があります。綾瀬駅の東口から見ると、お椀を伏せた形とも言えますが…。
都立公園で、広さは約16万平方メートルもあります。U字型の公園の全長は約2キロ。園内には、サクラ、ラクウショウ、モミジバフウ、ツツジなど季節感を味わえる樹々が植えられているとのこと。また、地域と連携した防災公園としての機能もあり、防災トイレやカマドベンチなども有しているのだとか。
…ということで、東綾瀬公園をぐるっと一巡りして綾瀬駅に向かいます。東綾瀬団地を横目に歩き、陸橋を渡ると野球場やテニスコート、公園管理事務所のあるエリアに出ます。ケヤキやプラタナスの森もあって、ベンチで野球を眺めながら小休憩。
左側にある温室のような建物は、すいすいらんど綾瀬。冬の寒さの中、ガラス越しに水着で泳ぐ人たちを見て、何だかうらやましくなりました。
渦巻き型の歩道橋を渡り、いくつか花壇があって目を楽しませてくれます。
千代田線のガードをくぐってさらに公園の中を進みます。すると、また正面に野球場が…。今朝から何度野球場を見ただろうと思いました。足立区の子供たちは野球が得意になりそうですね。野球場の横には、せせらぎ水路の出発点ということで、広い池が作られていました。
たくさんのカモを眺めているだけで時の経つのを忘れます。
水辺と桜、柳、イチョウの木の配置が素晴らしく、美しい冬の景色にしばし見入ってしまうのでした。
ここからはせせらぎ水路沿いに景観の変化を楽しみながら綾瀬駅を目指します。
水路には遊具もいくつか備えられていて、それが小ぶりな城にも見えるのですよ。遊具の上に立ち、ここが本丸とすると、あちらが二の丸、そしてあっちが三の丸と勝手に決めて、どこに土塁を作ろうか、空堀をどこに掘れば防御性がアップするか、妄想を膨らませることができました。
この流れも、かつては農業用水だったのでしょうね。
石造りのような立派な歩道橋を渡り、アスレチック場のあるエリアへ。こちらでは、赤く色づいた葉が見事な景観を見せてくれました。
日本建築学会賞に輝いた東京武道館
そのままアスレチック広場を進むと正面に存在感たっぷりの建物が見えてきました。このギザギザな外観はちょっと例えようがありませぬ。
これは、1990年に開館した東京武道館。武道館と聞くと、このひし形が続くデザインは武田信玄で有名な「武田菱」をイメージしてしまいます。戦国最強といわれる武田騎馬隊は武道の象徴のイメージもありますし。
ホームページによれば、設計者は六角鬼丈氏という方だそうで、氏の名前通りの力強いデザインだと思いました。この菱形を積み重ねた外観は、日本の「雲・海・山・人」をイメージしたそうです。
そういえば、武田菱も、全国の武田家の結束をアピールした意味があったと言われているらしい。ちなみに、この建物は、1991年の日本建築学会賞に輝いたそうですよ。
「日本武道館」は夢殿を模したと言われていますが、「東京武道館」のほうがより武道をイメージできるかもしれませぬ。
2017年5月10日