高速バスには2種類ある!?路線バスとツアーバスの違いについて
日本においては飛行機よりも市場規模が大きいと言われている高速バス・夜行バス市場。
年間輸送人員数は航空が9000万人であるのに対し、高速バスは約1億1600万人となっています。
街なかでも全国様々な場所へ向かう高速バスを見かけることでしょう。
そんな高速バスですが、2013年までは「高速路線バス(乗合バス)」と「高速ツアーバス」の2種類がありました。
いったい何が違っているのか。今回は「高速路線バス」と「高速ツアーバス」の違いについてPick Upします!
2種類あった高速バス
かつて高速バスは、「高速路線バス(乗合バス)」と「高速ツアーバス」の2つに分かれていました。
高速乗合バスは1964年の高速道路誕生を端に発し、地域の路線バス事業者が認可を得る形で運行をしてきました。その後2002年の規制緩和によって、「高速ツアーバス」が誕生しました。高速ツアーバスは、規制緩和によって移動手段である高速バスを旅行商品として販売することができ、中小・新興企業の新規参入を容易にしました。
そこから高速バス市場は急速な拡大の道を歩みましたが、多数の新興企業が高速バス業界に参入したことによって過当競争状態に陥り、運賃の低下や経費抑制、運転士の過労運転などの問題も生まれるようになりました。
これらは吹田市のスキーバス事故(2007年2月、27人死傷)や関越道高速バス居眠り運転事故(2012年4月、乗客7人死亡、乗員乗客39名重軽傷)などの事故に繋がり、高速ツアーバスの安全面の管理不足があらわになりました。
吹田でのスキーバス事故の後、国土交通省は学識者や高速バス関係者、ツアーバス関係者などによって組織される「バス事業のあり方検討会」を2010年10月に設置し、その報告書として「安全性や利便性を確保する仕組みが十分である」高速路線バス(乗合バス)と、「供給量や価格などで柔軟な変更が可能」な高速ツアーバスの長所を活かし、新たな高速(乗合)バスに一本化するべきとの結報告書が出されました。
これらを受けて、国土交通省自動車局は「高速路線バス(乗合バス)」と「高速ツアーバス」を一本化した「新高速乗合バス」制度を定め、2013年8月に一本化され、今日に至ります。
一本化された現在は、一見するとどちらも同じ高速バスにしかみえませんが、細かい所を見ていくと過去の背景からなる様々な違いが見えてきます。
旧高速路線バス(乗合バス)の特徴とは??
旧高速路線バスの多くは地域の路線バス事業者で、いわゆる「バス停」を有し毎日運行を行っていました。位置づけとしては公共交通機関で、駅前で見ることの多い「路線バス」の長距離版といったところでした。またその他にも以下のような特徴があります。
契約の相手方 |
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路線バス会社 |
契約の種類 |
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運送契約 |
乗降場所・乗降の手続き |
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バス停留所から乗車、停留所から予約無しで直接乗車することも |
運行の有無 |
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基本的に0人でも運行する |
事故時の対応 |
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自己処理や損害賠償は路線バス会社によって行われる |
営業における規制 |
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運行ダイヤや運賃については路線開設時に届け出申請 |
新規の参入 |
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困難 |
旧高速ツアーバスの特徴とは??
高速ツアーバスとしてはWILLER TRAVELやオリオンツアー、VIPライナーなどが挙げられます。
これらの事業者やブランドは路線バスは運行しておらず、旅行会社がお客さんを募集し、観光バス会社のバスを借りて運行する、といった形を取っています。
こちらは旅行会社が営業しているため、旅行業法の募集型企画旅行に属します。(旧高速路線バスは道路運送事業法)
他に特徴としては、
契約の相手方 |
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旅行会社 |
契約の種類 |
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旅行契約 |
乗降場所・乗降の手続き |
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停留所が設置されているとは限らず、事前に受付をしてから乗車する
事前に契約が成立している必要があり、当日バス停留所で乗車することは出来ない |
運行の有無 |
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最少催行人員に達しなかった場合は運行されない場合もある |
事故時の対応 |
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自己処理や損害賠償については運行するバス会社が行い、旅行会社は補填金や見舞金を支払う |
営業における規制 |
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個別の届け出申請は不要 |
新規の参入 |
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容易、2002年の規制緩和で新興企業が参入 |
「新高速乗合バス」に一本化
2013年8月、国土交通省自動車局は検討会における報告書や関越道での事故を受けて、「新高速乗合バス」制度を定めました。
これによって旧高速ツアーバスの事業者は事業継続に当たり、営業所や車庫、車両の準備や一般乗合旅客自動車運送事業の許可、また業態を乗合バス事業者に変更するなどの対応が必要になっりました。これは旧高速ツアーバスの事業者にとってはハードルが高く、実に6割もの旧高速ツアーバスの事業者は新高速乗合バス事業には移行・参入していません。
また運行を継続する事業者も運賃の値上げや運行本数の減少などの対応が迫られています。
とはいえ、この移行によって高速バス業界は良い方向に進んでいます。
バス停があることやダイヤがしっかり定められている点は旧高速路線バスの良い面であり、また旧ツアーバスの特徴である「運賃が変動性」になることで需要に合わせて最適な価格で提供・購入することが可能になりました。
またツアーバスで相次いだ安全性面への懸念は、新制度への移行によって確実に向上したでしょう。
このような背景が有り、現在の高速バス市場が形成されています。
まとめ
一時期事故のニュースなどが相次ぎ、高速バスに対する信頼性が下がった時期がありましたが、新制度への一本化などによって高速バス市場は成長を続けています。
最近でも訪日外国人の増加や豪華な内装のバスなど、これまでにない形の発展を続けています。
今後も進化していく高速バス市場、期待が高まります!
2018年10月22日