秘湯シリーズ5〜石灰華で覆われた濃厚源泉掛け流しの長湯温泉・郷の湯旅館〜

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湯船も排出口も温泉成分が結晶化し厚く覆っている様はまるで温泉噴火口です。「沸かさず」「薄めず」「循環せず」を理解し賛同する方、温泉を心から愛する方を歓迎する宿です。館主は妥協しません。湯治コースの料理をお勧めします。

最初におことわり

大分県長湯温泉「郷の湯」(さとのゆ)は、濃厚温泉の析出物で有名です。一目見れば、圧倒される析出物(石灰華)です。館主曰く「宣伝はしたくないんです、理解のないお客が増えるのは遠慮して、真にこの温泉を愛する方に来て欲しい」ということです。

下の写真をご覧ください。いきなり直球です。館主とお話しすると「郷の湯うんちく」を披露していただけます。郷の湯は温泉伝道師の宿です。そしてわかったのは、女性重視の宿でもあることです。

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宿の入口でまずびっくり

大分県・長湯温泉で県道30号線の道路から看板に沿って脇道に降りると小さな橋があります(手前に鎖あり)。橋の横に析出物(石灰華)が小山のように盛り上がっています。

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これを見て心の中は「パブロフの犬」状態、よだれが出てきました。1分でも早く入りたいという、体うずうず状態です。

析出物は黄色は硫黄ですが、所々が緑になっています。これは多分藻類でしょう。緑色は光合成による植物の色、高濃度二酸化炭素の中でも生き続ける特別な藻ではないでしょうか。いつか温暖化の原因の二酸化炭素を吸収する女神になるかも。

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三筋の塊が見えて、この上の建物が湯宿であることは間違いない。おそらく湯船は3つ。石灰華は炭酸カルシウムです。

湯治宿の鄙びた佇まい

晩秋から冬の風情。右手の湯治棟や昔の貸切風呂があります。この佇まいが一級品。 いかにも湯治宿。昔ながらの宿が好きな方は、これは受けると思います。鄙び感が抜群ですから。

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やや朽ち果てそうなところがまたいい。が、あえて言うなら乳頭温泉・鶴の湯のように黒く塗ればまたいいかもしれない。この佇まいが隠れた経営資源だと思います。

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左に見える郵便ポストは元々ここにあるのではなく、移築したもの。山奥の秘湯で時々見かける郵便ポストです。

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軒先には柿が吊るされています。庭で採れた柿に違いありません。続いてバス停を発見しました。

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メインの道路にはかつて「長湯温泉入口」というバス停があったそうです。それを貰い受けてディスプレイにしています。「湯治」の赤がいいですね。この看板の裏が湯治棟です。

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湯治棟の夜は石油ランプが連なりに点灯されていて、風情満点です。

石灰華で覆われた濃厚温泉

男性用の風呂のドアを開けるといきなりこの風呂が登場!なんだこりゃ!!風呂なのか?粘土細工なのか?重厚コンクリート製なのか?わからないほどの析出物。一体、最初の風呂自体はどうなっていたのだろうか??

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これはすべて析出物(石灰華)です。析出物が成長して固まった湯船で、内側と外側に成長して湯船が次第に狭くなっていくようです。

郷の湯の泉質はマグネシウム・ナトリウム・炭酸水素塩泉です。成分総計は5000mg/kg以上ある高濃度温泉で、200mg/kg以上あるカルシウムは水酸化カルシウムになっています。炭酸水素塩なので二酸化炭素成分も濃く、水酸化カルシウムと炭酸水素塩が結合して炭酸カルシウムになります。これが石灰華です。

源泉が流れ出る時に、お湯は熱いから水分は蒸発しやすいので炭酸カルシウムも析出しやすい。それで石灰華がどんどん成長します。

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湯船には薄黄緑色で半透明の湯が溢れています。温度は源泉が51℃だから直接手を触れると熱いです。湯船の温度は43℃くらいでちょっとピリリとします。

そこで、館主のご指示通りに掛け湯を10杯ほどかぶると確かに丁度良いです。そういえば草津温泉など熱い湯の場合は掛け湯が伝統的に行われていますね。

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石灰華の例としてはトルコのパムッカレや鍾乳洞の中の千枚田は有名です。炭酸カルシウムはコンクリートの原料にもなるから硬く、その石灰華がここでは高速に成長しています。天然記念物に指定されてもおかしくない重厚さです。

最後に女性用の湯船です。ドアを開けると広々とした湯船が登場します。細長いし綺麗です。細長い湯船と分厚い壁がすごいことになっています。

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お湯が半透明でお茶のような色をしています。びっくりしたのはお湯の温度がちょうどよいこと。というのは、湯船が大きいからお湯が長く滞留して少し冷めるんだなと納得します。佇まいといい湯温といい風情も含めて一押しの湯です。

ただ、男性が入ることができる時間帯はかなり限られています。そこで男性としては「もう少し長く入らせてくださいな」と館主にお願いする。ところが館主曰く「いいんです、ここは女性重視ですから」とつれない返事。仕方がない、いつか女に生まれ変わって来るしかない。

湯治コースの食事

湯治コースをお願いしたので、量は控えめで丁度良いです。メニューは地鶏のたたき、カンパチのお刺身、 小あじの南蛮漬け、おひたしに茶碗蒸し。

さらに鮎の塩焼きがタイミングを見計らってあつあつが出てきて、次は豊後牛だと思いますがステーキも焼きたて熱々が出てきました。それにオコゼのてんぷら、これもあつあつ丸ごとかじります。写真省略でゴメンなさい。

豪華絢爛たる料理よりもこのアツアツ方針で持って来ていただくのが一番の贅沢です。

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最後に出てきたのが鮎そうめん。鮎そうめんは上級者の料理ではないでしょうか。塩焼きの鮎とダブっていてもこの小鮎は食感と味が全く違う。そうめんもワタクシの好物です。

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そして締めのお茶漬け、それに、中には好物のイノシシの燻製とゆずが両方入っていた。イノシシの野生味と燻製の香りが秘湯風情を盛り立てます。

なぜ館主は、ワタクシが小食でイノシシを好きなことを知っていたのだろうか?そう単なる偶然です、でも少し感動してしまいました。

郷の湯では、料理も熱いものは即座に出すという方式が徹底している。てんぷらや焼肉など、あつあつのものを、一秒でも早くという感じで厨房から仲居さんや館主自らが小走りに持ってきていただいた。

それがうまいこと!そして量が全く完璧(少し控えめ)、私の好み通りに出していただいた。不思議に思ってよく考えてみたら、これは湯治コースでした。皆さん、湯治コースをオススメします。

余談ですが、館主は料理だけでなく家具などなんでも自分で造られる。そして明るいテンションで話の尽きない館主さんです。次は朝食です。

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朝の光を浴びて中央のメザシが濃厚でうまい。豆腐もうまい。一番はおひつのご飯、そこで一句「おひつから湯気立ち上る秘湯かな」。でも、これは変な俳句ですね、湯気が立ち上るのは風呂でなければならないから。

ワタクシは家ではご飯を土鍋で炊いておひつに入れていただいてます。水分が程よくなり、少し冷えてもおいしいんです。木製のおひつをお奨めします。

おわりに

地下200mからポンピング自噴。「沸かさず」「薄めず」「循環せず」これは湯守兼館主の哲学で絶対曲げません。このためお湯の温度は湯船に入れる源泉量と湯船の大きさと外気温で決まります。「少し熱いのでは?」とお聞きすると、「そのとおり、体で勝負しろ」とは言われずに「掛け湯をすれば最初入る時だけ熱いがあとは大丈夫」と丁寧に教えてくださった。

指示通りに実行すると確かにその通り。早速、館主に報告すると「でしょ!」とニッコリ快活にご返事。いや、ありがとうございました。

お湯の中や、床面もざらざらと石灰華の粒子が渦巻いています。温泉の濃厚さを文字通り肌で感じます。そして、アルカリ性だから、肌の油脂は洗い流され、少しかさかさになるような気もします。冬はクリーム持参でしょうか。

館主は「田舎での不自由な贅沢をご堪能下さい」と言われている。都会の利便性がないことは不自由なのではなく、本来自由な自分に戻ることではないでしょうか。

宿の地下から溢れる源泉を味わえ、湯治がお奨めの価値ある宿です。お湯は地球の息吹を感じる濃厚湯です。九州にもこんな宿があります。

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2015年12月21日

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