バスで堪能する奈良県五條市!明治維新から梅林まで盛りだくさん
交通の要所・五條
奈良県といえば歴史深い県として有名ですが、五條市については関西人以外はあまり知らないのではないでしょうか。五條市は奈良県中西部の山間にあり、北は大阪府、西は和歌山県に接しています。また、高校野球で有名な智辯学園がある市です。
奈良県の中心地からは外れてますが、道路では国道24号線、310号線、168号線が交わっており、24号線を北東に行けば奈良市、西へ行けば和歌山市、310号線を北へ行けば大阪府、168号線を南へ行けば太平洋岸の和歌山県新宮市に繋がるという、交通の要所でもあります。
鉄道路線はJR和歌山線が通じており、五条駅が市の中心駅となっています。しかし不思議なことに、五條市と五条駅では「じょう」の漢字が違います。
五條市史跡公園に展示されている日本初の国産蒸気機関車「金剛・ハロー号」
明治維新発祥の地
江戸時代末期、開国を迫る外国の圧力に屈し弱体化した江戸幕府を打倒し、外国人を排除して天皇中心の政府を作ろうとする尊王攘夷運動が勃発しました。その最大の事件が起こったのが五條なのです。
1863年8月17日、天誅組を名乗る尊王攘夷派は五條で決起して同地の代官を殺害し、五條新政府の樹立を宣言します。これがいわゆる大和行幸です。
しかし、翌18日の政変で一転、天誅組は敗れてしまいます。この一連の事件を天誅組の変と言い、約1ヵ月半でクーデターは鎮圧されましたが、これをきっかけに5年後の明治維新が実現したのは間違いありません。
現在、五條市の中心部には五條新町という、江戸時代初期から続く古い街並みが残っています。江戸時代にタイムスリップしたような、情緒あるのどかな街ですが、幕末にここで日本を揺るがす武装反乱事件が起きたとは信じられません。
重要伝統的建造物群保存地区となっている五條新町
最近まで使用されていたバス専用道
時代はグーンと下って2014年9月30日、あることで五條が注目されました。この日を以って、五條市を縦断していたバス専用道が廃止になったのです。
バス専用道自体は全国にあるのですが、珍しいのはこのバス専用道が元々は鉄道用に造られた道だという点です。五条駅から、国鉄(現:JR)紀勢本線の新宮駅まで、実に紀伊半島の3/4を占める五新線という長い路線を敷設する計画があったのです。
戦前から工事が始まりましたが、資金面や沿線人口の減少などの問題により計画は頓挫、工事は中断され鉄道計画も幻となりました。
しかし、残された鉄道跡をそのまま放っておくのはもったいない、ということでバス専用道に転用されたのです。でも、その長さは約12kmと、五新線計画よりは遥かに短いものでした。
そのバス専用道もメンテナンスの問題や利用客の減少により、2014年に廃止されたのは前述のとおり。ただし、現在でも路線バスは存続しており、国道168号線を通っています。
幻の五新線跡の高架
在りし日のバス専用道
賀名生梅林
五條にはもう一つ、有名な路線バスが通っています。それが八木新宮特急バスです。近鉄の大和八木駅から五条駅を経由して新宮駅に至るという、高速道路を通らないバスとしては日本一長い路線バスです。何しろ片道6時間半もかかるのですから、その長さは想像もつきません。
八木新宮特急バス、もしくは国道168号線を通る路線バスの途中に賀名生和田北口という停留所があります。ここには賀名生(あのう)梅林があり、見事な梅が咲き誇ります。早春に五條へ行った時は、ぜひ立ち寄るべきでしょう。見頃は2月下旬~3月下旬、特に3月中旬頃がお勧めです。
梅の名所・賀名生梅林
東京からはバスで一本!
奈良市からは遠く、関西以外の人には馴染み薄い五條ですが、なんと東京から五條行きの夜行バスが出ているのです。やまと号と呼ばれるこのバスは新宿・京王プラザホテルを出発し、新宿高速バスターミナルを経由して、奈良県の天理駅、桜井駅、大和八木駅、大和高田駅、近鉄御所駅などを経て五条駅近くの五條バスセンターに至る高速バス路線です(もちろん、復路はこの逆です)。バス路線に事欠かない五條は、もはやバス王国ですね。
運賃も格安で、関東在住の方はやまと号を使わない手はありません。この春は、ぜひ五條へ行きましょう。詳しい時刻表や料金はバスサガスで検索!
2016年2月26日