中井靖

四国八十八ヶ所霊場会公認大先達

コラム

青年空海の見た風景。高知県「新村不動堂」の青い空と海

真言宗を開いた弘法大師空海。青年時代の空海は四国各地で修行をしたとされます。実際に彼の著書「三教指帰（さんごうしいき）」では『阿波大龍嶽に登りよじ土州室戸の崎に勤念す』と記され、室戸の雄大な自然環境の中で修行をしながら自身の宇宙観を生み出したところであるとされています。

新村不動堂は室戸岬と羽根岬のほぼ中間地点に位置し、高さ約40mの海に面した「不動巌」に建つお堂であり、現在でも多くのお遍路さんや地元の漁師たちが訪れる信仰が深い場所です。不動堂の裏手には洞窟があり、そこから眺める青い空と海は青年空海が見た風景と同じものです。

今回はその見事な風景をご紹介しましょう。

Index

1 女人堂と呼ばれた新村不動堂
2 大師堂にはお大師様が…
3 空海修行の座石を発見！
4 目に入る景色は空の青と海の青！
5 空海が籠った「西の窟」
6 青年空海の見た風景
7 まとめ
- - 7.0.1 高知発着の高速バス
  - 7.0.2 高知発着の飛行機

女人堂と呼ばれた新村不動堂

行当岬６

四国八十八ヶ所霊場第26番札所金剛頂寺は明治初期まで女人禁制で女性は入山できず、その代わりに、この新村不動堂で納経を済ませたところから「女人堂」とも言われていました。

現在、この場所はここから約4km離れた場所にある金剛頂寺の飛び地境内になっていますが、江戸期の金剛頂寺の寺領は現在の室戸市全域とほぼ同じくらいだったと言われています。

お堂のご本尊は浪切不動明王が祀られ、多くのお遍路さんや地元の人々の信仰をうけています。またこのお堂の納経印（ご朱印）は金剛頂寺で受ける事ができます。

大師堂にはお大師様が…

行当岬７

四国八十八ヶ所霊場の境内にはそのお寺のご本尊をお祀りする本堂と四国霊場特有の弘法大師空海をお祀りする大師堂などが建っています。お遍路さんは本堂だけをお参りするのでなく、大師堂も本堂と同様にお参りする習慣が昔から根付いています。

ここ新村不動堂にも大師堂が祀られ、お寺として機能していたことがわかります。不動堂にお参りの際は、大師堂にもお参りしましょう。

さてこの不動堂の裏手に実際に青年空海が修行した霊蹟が残っていますので向かうことにしましょう。

空海修行の座石を発見！

行当岬１-1

不動堂の左側に海側に抜ける遊歩道を進んでみましょう。目の前には真っ青な大海原が飛び込んできます。その雄大な海を見ながら遊歩道をさらに進むと写真の看板が見えてきます。

空海修行の座石は写真の柵を越えて約3m下方にあります。多くのお遍路さんは空海が座った岩に行こうとしますが、足を滑らせると海まで落ちる可能性がありますので「怖い」と思われる方は絶対に柵を越えないでください。柵を越えなくても見える景色は同じです。

行当岬２-1

座石に行けない方のために写真を撮ってみました。この石は他の石に比べて少しだけ海にせり出していて、海風が心地よく頬に当たります。

この場所で修行していた青年空海に思いを馳せながら瞑想に耽るのもいいかも知れませんね。

目に入る景色は空の青と海の青！

行当岬３-1

座石を後にしてさらに遊歩道を歩いているとこのような絶景が待っています。この不動巌はウバメガシ、アコウなど木々が群生していてその間から見る景色に言葉を失います。

この辺りから遊歩道の道幅はかなり狭くなりますので注意が必要です。そしてこの小道の先には青年空海の息づかいが聞こえて来そうな洞窟が見えてきます。

空海が籠った「西の窟」

行当岬９-1

不動巌は青年空海が修行した場所だけでなく、聖地を慕う後の時代の修行僧たちの修行道場であり、岸壁にしがみつきながら断崖や巨石を巡る「かいさはり」などの行をした場所とされています。今では小道が整備されていますが昔は命がけの行道だったことがわかります。

海に向かって二つの穴が開いていて、それぞれ「西の窟」「東の窟」と呼ばれていて、写真の西の窟は中が広いために籠り堂として使用されたと伝わっています。