リレー徘徊35:京の庭・美術館の小さな庭(左京区)
京都には大中小、色々な美術館があります。平安神宮大鳥居の東すぐ横に京都市立美術館があります。この美術館は昭和天皇即位記念事業として昭和8年(1933年)に日本で2番目に大きい公立美術館として、「日本趣味を基調とすること」を条件に前田健二郎によって設計&建設されました。実は、この美術館の東側にリレー徘徊30・京の庭・円山公園・庭編で登場した近代日本庭園の先駆者とされる作庭家で庭師「七代小川治兵衛(おがわじへえ)が作庭したこじんまりとまとまった小さな庭があります。
今回は、この庭をご案内しますね。ちなみに道路を挟んで西側には京都国立近代美術館があります。少し西へ歩くと細見美術館もありこの周辺、芸術回廊でもあります。
庭師小川治兵衛作庭の小さな庭
京都市立美術館(帝冠様式の建物で元大礼記念京都美術館、近々京都市京セラ美術館と改名)の東側、池の周りを歩けば3分で一周できる小さな庭があります。池の前にベンチがあり「藤棚のある普通の公園」って感じですが、実は琵琶湖疏水の水を引き入れた池を中心とした小川治兵衛作庭の回遊式庭園なんですね。
東側に廻ってみるが、最初、庭は見えません
東山を借景に作庭?
まず正面から庭を見ます。多分、作庭当時は背の低い黒松が主体で、東山を借景に展開したんだろうと想うんですが、今は街路樹が邪魔で、ほとんど見えなくなっています。街路樹を切り、黒松などを手入れすれば、それなりの庭に見えるようになるんでしょうね。命名権が京セラに移るのを契機に整備してほしいもんです。
そうそう、道路を挟んで東側に京都市立動物園があります。この動物園、狭いながら展示方法が他の動物園に見られないやり方で面白いんですよね〜また別の機会にご紹介しますね。
いい風景のアクセントになっている石橋
道路側から見るとこんな感じ
東から美術館を見ると…
池の向かって左にある石橋を渡り松の中に入ると、作庭時には雛壇状に木が配置されていたんでしょうか? コンクリートの遺構が残ってます。この雛壇に松を植え高低差を利用して庭に遠近感を出していたんでしょうか?
このあたりに池に突き出た半島状の部分、琵琶湖に突き出た砂州って自然な風景感がありポイントになってますが、どーんと池前に建つ美術館との折り合う風景が平坦になっていて面白くないです? あくまで、東側は。庭の正面から東山を借景に見るような木々の配置なんでしょうね。じゃあ、美術館とのベストバランスなポイントはどこよ?ってなるわけで…
あ、ここか~♪
ということで美術館と池の風景が共鳴する場所ってあるのかな?〜と少し歩くと…ありました!! 池の南の端っこ、ここから見る美術館を背景に池を入れた景観がいいです。
最初、なんで池がこんな変形瓢箪な形をしているんだか?と思いましたが、この位置から池と背景に美術館をいれると、手前の小さな半島で遠近が強調され、この小さな池がとても大きく広く見えて、荘厳な建物とベストポジションで収まる景観になってるんですね。さすが庭師・小川治兵衛!!
さらに…
さて見終わったんで平安神宮にお詣りして帰ろと思ったら庭の北側の建物屋上に入れたので、高台からこの庭を見たらどうなるのかな?と…おお、こらーええやん~♪ 当時、この建物がなかったので、さすがの小川治兵衛も高い位置からの眺めは考慮してなかったろうなぁ~と、ふと足下を見ると、あら?石組みの階段があります。降りて見てみましたが、残念ながら木々が覆い繁り庭が見えません。たぶん、この石段は作庭時からあると思われるので、庭と道路との高低差からの風景も考慮にいれての作庭やったんでしょうね。いやはや、見事なり小川治兵衛!!であります。
次回は、リレー徘徊の連続性から外れますが、ひっそり紅葉を楽しめるのは今でしょう〜の鳴滝をご紹介します。
2016年11月9日