相撲発祥の地！？奈良県の葛城市相撲館「けはや座」
春場所に力士が訪れる施設
今年（2017年）1月、東京・両国国技館で行われた大相撲初場所では、大関の稀勢の里が初優勝し、第72代横綱に昇進しました。3月12日から大阪府立体育会館（エディオンアリーナ大阪）で行われる春場所は、稀勢の里フィーバーにより前売り券が飛ぶように売れているそうです。
春場所の時に、お相撲さんがよく行くという施設が奈良県の北西部にあります。それが、葛城市の當麻（たいま）にある葛城市相撲館「けはや座」です。なぜ本場所も行われない奈良県に相撲館があるのかというと、この近辺が相撲発祥の地と言われているからです。
奈良県の當麻にある葛城市相撲館「けはや座」の入口（観光休憩所）
本物の土俵に上れる！
入口となっている観光休憩所（休憩は無料）の受付でチケットを買って「けはや座」に入ると「相撲甚句」がエンドレスで流れています。そして、まず目に飛び込んで来るのが本物の土俵です。
大きさや造りはもちろん、土も本物です。ただ、俵だけはナイロン製だそうですが。現在では、稀勢の里の等身大パネルが土俵に飾られています。
本物の土を使った本格的な土俵
そして、なんとこの土俵に上れてしまいます。しかも、土足でもOK。さらに、塩も用意されていて、土俵に撒くことができます。力水の桶と柄杓もありましたが、残念ながら水は入ってませんでした。
土俵脇には塩と、力水の桶と柄杓
筆者も土俵に上って塩を撒いてみましたが、靴のまま上ってしまい、後から考えると裸足で上った方が力士になった気分になれたのに、ちょっぴり後悔。また、桝席もあって、そこには力士用の着ぐるみも用意されていましたが、さすがにこれは恥ずかしくて着られませんでした(笑)。
桝席には力士用の着ぐるみと大銀杏のカツラも
展示物がズラリ
では、桝席の階段を上って2階に行ってみましょう。2階には、相撲に関する写真や資料が数多く展示されています。
好取組の写真や、古い時代の珍しい資料は、相撲ファンにとってはたまりません。もちろん、相撲史の年表も飾られています。
2階に飾られた数々の展示物
大正時代の雑誌「武侠世界」の臨時増刊「相撲画報」
ホントに相撲発祥の地なの？
では、本当にこの地が相撲発祥の地なのでしょうか。もちろん、それには諸説ありますが、相撲が文献に現れるのは日本書紀で、なんと現在でいう弥生時代に初めて捔力（すまひ＝相撲の語源）が行われた、と記されています。
第11代・垂仁天皇の頃、大和国（現：奈良県）にあった當麻の邑（むら）に當麻蹴速（たいまのけはや）という、怪力自慢の男がいました。當麻蹴速は「俺より強い奴など存在しない」と豪語しましたが、それを伝え聞いた天皇は「當麻蹴速に勝てる者はいないか」と家臣に尋ね、家臣は「出雲国（現：島根県）に野見宿禰（のみのすくね）という男がいます」と答えたそうです。
そこで紀元前23年7月7日、天皇は野見宿禰を大和国に呼び寄せ、當麻蹴速と闘わせました。これが日本最古の相撲とされています。
野見宿禰と當麻蹴速との対戦図
勝負は、野見宿禰が蹴り合いから當麻蹴速のアバラ骨を折り、さらに腰骨を踏み折って殺してしまいました（そんな無茶な……）。これにより當麻蹴速の領地は没収、野見宿禰に与えられて、天皇に仕えるようになったと言います。
邪馬台国より遥か昔の時代、本当に天覧相撲が行われたとは思えませんが、原始的な相撲は今でいう総合格闘技、いやそれどころか素手での殺し合いのようなものだったのでしょうね。天下一武道会ですら、相手を殺すと反則負けなのに……（注：漫画「ドラゴンボール」に登場する格闘大会のこと）。
なお「けはや座」の前には、當麻蹴速の墓とされる「蹴速塚」があります。
「けはや座」の前にある「蹴速塚」
春場所の時にはぜひ「けはや座」へ
「けはや座」は大阪府との県境にそびえる二上山の麓、當麻寺の近くにあります。
大阪府立体育館から行く場合は、難波駅から地下鉄御堂筋線に乗って天王寺駅で下車、近鉄南大阪線の大阪阿部野橋駅から橿原神宮前・吉野方面行きの準急に乗って（急行乗車の場合は古市駅で乗り換え）約40分で当麻寺駅に着きます。駅から當麻寺参道沿いを西へ歩くと、約5分の所に「けはや座」があります。
春場所へお越しの際は（もちろん、それ以外の時でも）、葛城市相撲館「けはや座」へ行って、相撲の歴史を感じてみませんか。
入場料：大人300円、小人150円
開館時間：10:00～17:00
休館日：火・水曜日（祝日は開館）
葛城市相撲館「けはや座」の本館。左隣りが入口の観光休憩所
2017年2月17日
