飛鳥時代の主要道・横大路が通っていた奈良県大和高田市
奈良県下で一番人口密度が高い市
飛鳥時代、日本最古の官道として敷設された竹内街道。現在の大阪府堺市から奈良県葛城市まで、約26kmを結ぶ主要道でした。
葛城市から、飛鳥京があった奈良県明日香村までは横大路が通っていました。当時としては、竹内街道と並ぶ大動脈だったのです。
長谷本寺の前を通る横大路(後の項参照)
その横大路が街の中心部を東西に通っていたのが、現在の奈良県北西部に位置する大和高田市です。大和高田市は奈良県下で最も人口密度が高い主要都市なのです。
では今回は、近鉄南大阪線の高田市駅から出発します。同線の大阪阿部野橋駅から吉野行き急行もしくは特急(特急料金必要)に乗って、約35分で着きます。
近鉄南大阪線の高田市駅前から延びる、昔ながらのアーケード商店街
龍の胴体、石園座多久虫玉神社
高田市駅を出て徒歩すぐの所に石園座多久虫玉神社があります。もう、どう読むのかわかりませんね(笑)。「いわぞのにいますたくむしたまじんじゃ」と読みます。
あまりに長すぎるせいか、地元の人は龍王宮と呼びます。前回、奈良県葛城市の長尾神社について書きましたが、昔の大和国(現:奈良県)には龍の伝説があって、三輪山の麓にある大神神社(奈良県桜井市)が龍の頭、長尾神社が龍の尻尾となり、龍の胴体を担うのが龍王宮なのです。
「龍の胴体」龍王宮こと石園座多久虫玉神社
大神神社~龍王宮~長尾神社のラインは横大路で結ばれているので、いかに重要な交通路だったかがわかります。現在でも龍王宮は市の中心部にあり、市民から愛されています。また敷地内にはこども園(保育所)もあります。
交通量が多い国道24号線側の大鳥居。右側にあるのがこども園
本家!?長谷本寺
では、龍王宮を出て、国道24号線を北へ歩いて行きましょう。細い路地を入り、約5分で長谷本寺(はせほんじ)に着きました。
この寺号にピンと来ませんか?そう、奈良県桜井市にある長谷寺(はせでら)と関係が深い寺院なのです。全国にいる「長谷川」さん発祥の地が長谷寺です(ん?筆者とも関係がありそうな……)。
長谷本寺のご本尊は、長谷寺と同じ十一面観音菩薩なのです。「本」と付くからには、こちらが本家でしょうか?
長谷本寺の入口
長谷本寺の創建年は710年、即ち「なんと見事な平城京」に遷都した年とされてますが、長谷寺の方は8世紀前半と、ほぼ同じ時期です。
したがって、どちらが本家かわかりませんが、長谷寺の方が観光地化されていて有名ですね。長谷本寺は観光寺とはなっておらず拝観無料、境内も狭いのでひっそりとしています。
でも、長谷本寺の前には横大路が通っており(最初の項の写真参照)、薬師寺に次いで奈良県下で2番目に大きな鐘があるのですから、由緒正しい寺院に間違いありません。
薬師寺に次いで奈良県下で2番目に大きい鐘、長谷本寺の鐘楼
城下町だったことを伝える高田城址
では、長谷本寺を出て東北東へ散歩します。狭い路地を抜け約10分、単線の踏切を渡ると、そこには片塩小学校がありました。
小学校前の道を右へ行くと小さな公園になっていて、その中にあるのが高田城址です。こんな所に城跡があるなんて、よほどの城郭マニアでなければ知らないでしょう。敷地は非常に狭く、榎の大木が目立ちます。
高田城址に立つ榎の大木。ブランコなどの遊具もある
高田城の築城年代は定かではありませんが、室町時代頃に高田氏が築いたと言われています。しかし1583年、織田信長の命に逆らったため、筒井氏に攻められ高田一族は滅んだとされています。ただし、このあたりの物証に乏しく、真意のほどは定かではありません。
現在では、石碑がひっそりと立っているだけです。遺構はなく、ここに城があったとはとても思えません。
高田城址の石碑
ここまで来れば、近鉄南大阪線の高田市駅よりも、JRの高田駅の方が近くなります。そちらから帰ることにしましょう。快速に乗るか、王寺駅で乗り換えれば、天王寺駅、JR難波駅、大阪駅、奈良駅方面に行くことができます。
現在でも交通の要所
飛鳥時代の大和高田は横大路が通る交通の要所でしたが、現在でもそれは変わりません。前述の高田市駅(近鉄南大阪線)や高田駅(JR)の他に、近鉄大阪線の大和高田駅もあり、大阪の上本町および難波方面はおろか、名古屋や伊勢・志摩方面にも行くことができるのです。
さらに道路では、自動車専用道路(無料)の高田バイパスも通じています。鉄道や道路でも、大和高田は奈良県の中枢を担っていると言えるでしょう。そして、関東方面と結ぶ夜行高速バスの停留所もあるので、そちらを利用する時はバスサガスで検索してください。
以前の記事でも書きましたが、大和高田は桜の名所でもあります。桜見物はもちろん、それ以外の季節でも、ぜひ大和高田にお越しください。
高田市駅(近鉄南大阪線)付近から高田駅(JR)および大和高田駅(近鉄大阪線)方向を望む
2017年5月24日