二度の東京オリンピックの舞台になる東京都世田谷区・馬事公苑を歩く
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古代ローマの劇場みたいな外観と巨大な人口の滝が魅力の用賀駅前
今回も、東京都世田谷区を歩きます。先日も、二子玉川から成城へぬける世田谷区のローカルな魅力をお伝えしましたね。前にも書きましたが、世田谷は私にとって、社会人の出発点になった場所。当時は、幹線道路沿いの比較的都会的な場所にありましたが、一歩大通りから中に入ると、畑や屋敷林がまだかなり残っておりました。
下町の人情は有名ですが、世田谷も下町とは違った素朴な人情にあふれていた記憶があります。一応、23区内なのに、地方都市を歩いているような気分になるのも旅心を満足させてくれる魅力ではないでしょうか。
…ということで、ウォーキングのスタートは東急田園都市線用賀駅。
駅の出入口は、古代ローマの半円形の劇場みたいな雰囲気なのですね。カラオケが好きな人は、中心に立って歌を歌いたくなるかもしれませぬ。毎日の通勤で階段の上り下りが大変ではと思ったら、ちゃんと横にエスカレータがあるのでした。
駅の近くには、広くて美しい芝生で有名な砧公園と、ゆったりとくつろげる世田谷美術館があります。そちらはまた別の機会にして、駅を出ると29階建ての高層ビルが目に飛び込んで来ます。
ここは、世田谷ビジネススクエアと言って、合計6棟のオフィスビル群にITや先端 技術関連の事業所が多数入居しているとか。巨大公園と高級住宅街、ビジネス拠点のコラボレーションですか。こんな素晴らしい環境で、仕事したいっす。
ちなみに、世田谷ビジネススクエアの地下には、こんな立派な滝が…。隣のカフェのテラス席で、滝を見ながらコーヒータイムも疲れた頭を癒してくれそう。
そして、仕事に行き詰ったら、滝に打たれて心頭を滅却することもできるか、と。…と思ったら、滝への立ち入りは禁止されているようですので念のため。
用賀駅から少し歩いた住宅街のなかにあるのが無量寺。
とくにマークしていなかったお寺ですが、歴史のありそうな山門の佇まいに魅かれて境内に足が向かいます。手前の「南無阿弥陀佛」と刻まれた石碑、奥の大イチョウ、さらに奥まったところにある美しい白壁の本堂が見事な遠近感ですな。
駅のすぐ近くに、こんな癒しスポットがあるのはいいですね。
2020年の東京オリンピック馬術競技会場として使用される馬事公苑
用賀中町通りをひたすら歩いて馬事公苑へ。この公苑は、騎手養成、馬術訓練、馬術競技会開催などを目的に設立されたらしい。1964年の東京オリンピックの馬術競技の会場にもなったところです。そして、2020年の東京オリンピックの馬術競技会場としても使用されることになったとか。その改修工事が17年1月から19年夏までの予定で行われるらしい。そう度々来る場所ではないので、今度来るときはガラッと雰囲気も変わっているのかもしれませぬ。
まず、公苑の外にある巨大な建物が、インドアアリーナ。
95メートル×42メートルという日本最大規模を誇る屋内馬場だそうです。馬の調教や競技用に使用されたり、1998年にはカドルノワール・ド・ソミュール日本公演が開催されたりしたらしい。
せっかくなので、弦巻門を通り過ぎ、正門から入場します。
公園は広々として、まわりの街のお洒落な雰囲気とあいまって、まさに都会のオアシスといった感じ。18ヘクタールもある広い園内には、馬場や厩舎のほかにも、庭園や遊園地があって子供が喜びそう。
入り口付近の花壇の木も馬の形に刈り込まれておりまする。
馬術競技を誰でも近くで見学できる
行った日は、入り口付近にあるメインアリーナでは障害飛越競技が行われていました。
馬術競技はあまり詳しくないのですが、これはオリンピックで見たことがあります。馬術競技の一種で、飛び越さなければ通過できない施設(障害)が設置されたコースを、乗馬して通過する技術を競う競技らしい。
馬って、近くで見ると大きいですね。サラブレッドはまさに筋肉の塊のようなイメージ。それが障害を楽々越えるさまは優雅であり、かつ迫力もありました。途中で障害に尻込みしてしまう馬もいて、思うように馬を操ることも難しさも実感です。
出場選手を見ると、女性が多いのですな。しかも、丁寧に障害をクリアしてトップの成績をあげた選手も女性でした。来たる東京オリンピックでは頑張ってほしいですね。
公苑の中には、1周1,100メートル、最大幅18メートルの走路もあります。ここを馬が疾走したら、すごい迫力でしょうね。
前回オリンピックの会場の雰囲気を体感できるのは今しかない
走路を渡ったところにあるのが、グラスアリーナ。
ここは前のオリンピック東京大会のために作られた馬場で、グランプリ馬場馬術競技が行われたらしい。きれいな芝が張られているそうですが、養生中ですかね。
観客席も歴史を感じましたが、前回のオリンピックのときのものなら感動ものかも。ここも改修工事が行われて、すごい規模の会場に生まれ変わるのだと思いますが。
人馬一体の馬場馬術競技
グラスアリーナのさらに奥にあるドレッサージュ・アリーナでも競技大会が行われているようなので行ってみることにします。
砂が敷かれた広い競技場に、馬に乗った選手が現れ、周りを取り囲む審判の前で、いろいろな演技が行われている。歩いたり、軽く走ったり、横に歩いたり、突然立ち止まったり…。審判たちは、まるでフィギアスケートの演技を採点するみたいなのですよ。
私は恥ずかしながら知らなかったのですが、これは馬場馬術という馬術競技の一つだそうですね。馬をいかに正確かつ美しく運動させることができるかを競うものらしい。騎手が意のままに馬を操りつつ、あたかも馬自身の意思で運動しているかのような印象を与えることが求められるのだとか。まさに、人馬一体の競技なのですな。
司馬遼太郎ファンとしては、「坂の上の雲」の中で、主人公の一人秋山好古が騎兵としての鍛錬をしているシーンをイメージしてしまいました。馬術というと西洋のイメージがありますが、日本も古墳時代からの馬術の伝統がありますからね。昔の武田騎馬隊の武者がオリンピックに出たら、どんな成績を残すのだろうかと興味がわきました。
「馬に注意」の看板通り、至る所で馬が見られる
前にも書きましたが、馬事公苑には日本庭園や児童遊園みたいな施設もあります。こちらは日本庭園。
近くには桜の木がたくさん植えられていて、春には馬と桜のコラボが楽しめそう。
それにしても、クマや蜂に注意という看板はたまに見かけますが、「馬に注意」とはあまり見かけませんね。
ほかにも、馬頭観音や馬事公苑開苑一周年(昭和16年9月29日)を記念して作られた愛馬碑など、馬好きにはたまらない?アイテムが苑内にはたくさんありました。
改修工事が行われたら、中に入れないゾーンや景観が変わってしまうゾーンもたくさんあるでしょう。旧来の馬事公苑の景観を脳裏に焼き付けたい方は是非お出かけください。
2015年11月12日